第228回 生命力を診る②
私が卒業した鍼灸学校の創設者は易学の大家、小林三剛先生なのですが、学生時代聞いた三剛先生の話です。三剛先生が病気で入院されていた時、予後不良の肺病患者が同じ病室にいたそうです。易者だった三剛先生は医師から見放されたその患者の艶のある声を聞いて「この人が死ぬわけない」と確信したそうです。そしてもっと栄養を取るようにアドバイスしたのですが、その患者は元々魚河岸にいたのでマグロの中落を病院に内緒で手配して食べ続けたところ、病が回復し無事退院できたそうです。
余談ですが、私も20代の頃肺炎で入院したことがあり、見舞いに来た母親が病院近くの魚屋でマグロの刺身を買ってきてくれました。もちろん母親は三剛先生の話など知るわけがなくただの過保護だったわけですが、マグロを食べてから急に血色が良くなり力が出てきたことを身をもって体験しています。医師から見れば病院食以外にそれも病人に生ものなどとんでもない不良患者だったわけですが、今でも風邪を引いたときはマグロを食べます。それも高カロリーである中トロを探します。ただし風邪でも高熱や食欲が落ちているときはダメです。あくまでも咳など呼吸器の症状が強く力が出ない時です。それにしてもなぜ肺病にマグロが効いたのか?昔からの民間療法に鯉の生き血が結核など肺病の特効薬とされていますが、生の血肉が良い作用をするのか?それとも高カロリーであることが大事なのか?例えば日本から結核が衰退したのはワクチンの開発というより戦後の食事が豊かで高カロリーになったためだと指摘する専門家もいます。
この程度でまだまだ皆さんにお薦めはできないのですが私の体験談として。
閑話休題、今回は「生命力を診る」の二回目です。第211回生命力を診るでは下腹部の話をしました。
今回は声の話ですが、人相や手相のように声から運勢を知る方法が「声相」で占術の秘伝でした。良く通る艶のある声はその人の運勢が強いことを示しています。例え福顔であっても声に元気がなければその人の現在は落ち目です。買いではありません。阿呆に見えても声に元気のある方が買いです。
東洋医学の理論である五行で声は木性、季節では春に相当します。つまり声に力強さがあればその人は伸長期であることを示しているのです。盛大に見えても声に弱りがあれば夏が過ぎ秋冬に向かう衰運です。
三剛先生のお話のように病気も声相で予後良好か不良なのかが判断できます。年を取り弱ってきても声相が良ければまだまだ寿命があります。元気そうに見えても声相が悪ければ要注意です。見た目の姿よりも声相の変化の方が早く出るため先を診ることができるのです。

第228回香肌文庫 2025.2.1