第220回 あべこべ
易に雷沢帰妹(らいたくきまい)という卦があります。正しい嫁ぎ方を教える卦なのですが、この雷沢帰妹は女性の方が男性へ求婚する形となっています。多様性の現代では特別珍しくもないのですが、古来、男性の方から女性へ求婚するというのが自然の姿でした。そのためこの雷沢帰妹の卦は「あべこべ」という意味があり、あまり良くない凶卦となっているのです。先日原因の分からない下腹部痛を訴える女性に易を立てこの卦が示されました。私はいったい何を示しているのか分からなかったのですが、病院の検査結果を聞いて納得しました。女性は卵巣の捻転を起こしていたのです。捻転とは左右がねじれて逆になること、まさに「あべこべ」ですね!
私たちはいつも右側ばかり凝りや痛みが出やすい右型タイプ、左側ばかり凝りや痛みが出やすい左型タイプに分かれます。(第12回右型人間と左型人間)右型の人が右側の症状を訴える場合は順症で心配ないことが多いのですが、右型の人が左側に症状を訴える逆症の場合は苦痛が大きかったり、場合によっては悪性であったりします。これも左右がねじれる「あべこべ」現象と言えます。
左右のねじれ以外でも、普段穏やかな人が怒りっぽくなったり、短気な人が穏やかになるのも「あべこべ」で病気の前兆によく見られます。また、季節外れの暑さや寒さ、季節を無視した飲食などが体調を崩しやすいのも「あべこべ」だからです。
健康以外でも時代に合わないやり方、年齢を無視した行動、全てねじれを生じます。
病気、災いは「あべこべ」になるということです。
第220回香肌文庫 2024.6.1