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香肌文庫 第141回 体内時計

今年のノーベル医学賞は、体内時計を生み出す遺伝子とそのメカニズムを発見した三人の博士が受賞されることとなりました。私たちの体にはサーカディアンリズム、一般に言う体内時計があることは知られていたのですが、詳しいメカニズムは不明のままでした。それが今回の発見で、ある遺伝子が作り出すタンパク質の増減が繰り返されることにより体内時計が周るということが明らかになったのです。
これら遺伝子や細胞といったミクロの医学とは反対に、東洋医学はマクロの医学ですが、体内時計があるという考えは同じです。東洋医学の体内時計は、人体は大宇宙のリズムと同じであるという「天人同一」の思想から成り立っているのです。そこで今回は現代人の生活習慣を東洋医学の体内時計から考えてみたいと思います。
東洋医学では常に一定の働きを続けているように見える臓器も、旺盛に働く時と休養する時があるとしています。私たちはそれを知らずにその臓器が働く時に妨害し、休む時に叩き起こすという虐待を行っているかもしれないのです。

一つ目の虐待は夜の運動です。仕事が終わってスポージムで汗を流す人、夜に息を切らしてジョギングする人、今では当たり前の光景です。しかし、筋運動というものを東洋医学的にみると、朝行うのが最も理に適っているのです。東洋医学では朝に肝臓が旺盛に働くとしているのですが、肝臓と運動筋は同系統となっており、朝運動することで肝臓の働きを良くしてあげることができるからです。
現代医学でいう肝臓とは少し認識が違うのですが、肝臓は臓腑の中ではスターターの役目をしているので、朝は肝臓を主役に立ててあげないと一日の良いスタートが切れません。夜に過激な運動をしてしまうと、休養している肝臓が時間外労働を強いられ、自律神経のバランスにも影響します。「東洋医学の方程式」
朝と夜では空気の質も違います。朝は比較的酸素の充実している空気で、夕方~夜は窒素主体の空気となります。酸素は肝臓と同じ木性(加速性)から成り、アドレナリンに火を付けて交感神経を働かせ心身にエンジンをかけます。しかし窒素は金性(減速性)なので、心身は収斂の方向に向かいます。夜の激しい運動は酸素の少ない場所で火を焚くのと同じで不完全燃焼となります。体脂肪を燃焼するにしても、酸素の充実した朝の運動の方がずっと効率が良いのです。自然に則って過ごすなら運動は朝に行い、夕方は散歩程度にして夜はジムに行くより家でゴロゴロしている方が良いと言えます。
また大気だけでなく、太陽光線も朝と夕方では正反対の作用で、朝の光は生成の光、夕方の西日は殺気光線となります。ポスターを西日の当たる壁に貼っていると変色することからも分かります。家相でも朝日の入る東は成長の方角とされ、遮るようなものがあると、その家は発展しないとされています。特に長男に影響が出ます。長男は木性だからです。反対に西の方角には西日をあまり入れないように、大きな窓を作らないのが鉄則となっています。植物も朝日では成長しますが西日では育たたないものです。

二つ目の虐待は食事です。特に朝食について考えてみます。朝食を東洋医学的にみると、軽くてすぐエネルギーになるものが適しています。無理に食べる必要もありません。前述したように、朝はスターターである肝臓が働く時で、消化器系は出番待ちです。消化器系は体がトップギアに入った昼頃に最も旺盛になります。
食欲のない子供に「朝はしっかり食べましょう」と豪華な朝食を無理矢理食べさせる親がいますが間違っています。普段から薄味を好む子供は特に朝食を食べたがりません。これは腎虚証という体質のせいで異常ではありません。無理に食べさせなくても体力がついてくれば食べるようになります。臓器が働く順番から考えても、食べるから成長するのではなく、成長するときに食べたくなるのです。
また、東洋医学では消化器系と中枢系はシーソー関係としているのですが、脳が急速に発達する幼児期などは時々食欲がセーブされるのではないかとも考えられます。空腹時の方が記憶力が高まるという研究報告もあります。東洋医学の体内時計は朝昼夕夜のサイクルを春夏秋冬、幼若中老といったように拡大縮小して考えることができます。
風邪を引いて寝込んでしまった場合なども、現代人はとにかく栄養補給を考えますが、このようなことをするのは人間だけです。他の動物はうずくまって、ほとんど食べずに治してしまいます。「うずくまる」も「食べない」も自然治癒力が高まる行為だからです。
易学からみても、病気の時は「坎(かん)」といって真夜中を表します。つまり体内時計は夜中の状態になっているので消化器系は休んでいます。これは体内時計を元気・高揚・衰退・病気で考えるのです。
鍼灸の古典「素問・熱論篇」でも、「熱が下がりにくいのは、病気なのに肉食や多食をするからである」と戒めています。病気の時は梅干し粥くらいがちょうど良いのではないでしょうか。
以上、特に目立って行われている二つの虐待について紹介しました。細かくあげればまだまだありますが、あまりうるさく追及すると精神的虐待?になるのでやめときます。


第141回香肌文庫 2017.11.1

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