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香肌文庫 第140回 子で瀉す

先月は体調や運気をよくするために行う虚せば母を補う」という方法を紹介しました。
今回はもう一つの方法である「実せば子で瀉す」というものを紹介したいと思います。
瀉とは洩らす、外に出すの意味であり、自分にとって子どもにあたる気を取り入れることによって余分な力を放出でき、体調や運勢のバランスを取るという方法になります。
「母を補う」の母が自分に力を補充してくれるもの全てを指すのと同様に「子で瀉す」の子も自分の力を吸収するもの全てを指します。
前回は母子の関係を火と木に例え、火力が弱いときは火にとって母にあたる木を足すことで火力を増すことが「母を補う」であると説明しました。では、火力が余剰に強い場合はどうするのかというと、火の子にあたる土を入れることにより火力が落ち着きます。これが「子で瀉す」です。土には火や太陽など熱を吸収する作用があるからです。吸収するというと一方的に奪われるようにみえますが、吸収してくれる存在、発散できる場所があるおかげで、一定の力で元気に燃えていることができるのです。

西洋には「ノブレスオブリージュ」という精神があります。これは「高貴なる者の義務」という意味なのですが、富裕者など社会的に強い者は、社会的な弱者を助ける義務があると考え行動するのです。日本の富裕者とはまるで違います。
この場合、富裕者にとって弱者は子にあたります。ですから先に説明したように、自分の力を吸収してもらう、弱者を助けることによって富裕者も救われているのです。
例えばこれは実際によく見聞することなのですが、不必要な大金を手にして一人占めしていると病気になったり、後継ぎがいなくなるといった不運に見舞われやすいのです。しかし、余剰分を他者や世間に還元することによって不運を免れるのです。企業でも慈善活動を積極的に行っている会社はいつまでも強いですが、儲けても世間に還元しない会社は必ず傾いてきます。これらも「子で瀉す」の原理です。
親子関係でも、親にとって子というものは体力も財力も吸収されてしまう存在ですが、吸収されることで親も助けられるのです。これは愛情やお金をかけた分、立派に出世して返してくれるとか、老後の面倒をみてくれるとかいったチンケなことではありません。そんなことは付録です。

なぜ他人に力をあげることで自分が助かるのか? それは、人は我が子や他人のために生きていると無敵に強く、鬼神も寄り付かないからなのです。
例えばガンで余命を宣告された人が診断に反して生き長らえる場合も、捨てておけない家族がいるとか、自分の病気に構っていられない状況の人なのです。
また、うつ病で悩む人を見ていても、本当は心が弱いのではなく、力を出すところ、必要としてくれる人がいないと感じるからふさぎ込んでしまうのです。人が弱くなってしまうのは全ての場合において、自分を必要としてくれる人や場所が消えたときです。
高次元の生き方とか、人間に課された試練といった宗教的思想ではなく、人間というものは他者のためにしか生きられないものなのです。

第140回香肌文庫 2017.10.1

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