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香肌文庫 第135回 巳月

鍼灸治療に補法と呼ばれる手技があります。(第16回参照) 
これはツボを通して患者に「気」を挿入してあげる方法です。この補法のやり方について古典では「刺した鍼を素早く抜け」と教えています。刺した鍼に力を込めるだけでなく、潔く後ろにスパッと抜くことでよりいっそう気を入れることができるのです。これはボクシングのジャブのようなもので、繰り出したパンチを勢いよく引くことでパンチの威力が増すのです。
「出すために引く」ことは一見物理学に反しているのですが、これが「本当の姿」なのです。
有名なトレーニングコーチの話によると、速く走るためには「地面を強く蹴る」ことが必要であると多くの人が考えてしまうが、地面を蹴り切ってしまうと脚の引き付けが遅れ、記録が全然伸びないのだそうです。ボルトなど一流のスプリンターは地面を力強く蹴って進んでいるように見えても、地面を蹴るべく後方伸展しようとしている脚にはすでに屈曲させようとする力が働いているのであって、走るということを伸展感覚ではなく、屈曲感覚で行っているようなのです。これはVTRを見ているだけでは絶対に分かりません。見た目の姿(客観)と感覚(主観)はオモイッキリ違うということです。物理学には主観がまったく含まれていません。VTR学習の落とし穴です。

さて、良い季節を迎えていますが、現在の五月は古くは「巳月」と呼ばれていました。この巳は「紀」という字が由来で、「止まり始まる」という終始点の意味があります。何が止まり始まるのかというと、草木がその伸長作用を止め、秋に向けて結実の準備を始めるのです。見た目にはこれから盛夏を迎えて草木は繁茂していくのですが、内在的にはもう収斂する方向で実を付ける準備をしています。本当の五月の姿です。

第135回香肌文庫 2017.5.1

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