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香肌文庫 第126回 対機説法

お盆でお墓参りに行く方も多いことでしょう。それにしてもお寺、いや仏教には多くの宗派があります。天台、真言、禅、日蓮、浄土、真宗… いったいどれがお釈迦さま本来の教えなのでしょうか?
実は全てがお釈迦さまの教えと言って間違いないのですが、それではなぜこのように多くの宗派が出来たのかと言えば、それはお釈迦さまが「対機説法」の名人だったからなのです。
対機説法とは、強い者は厳しく導き、気弱な者は優しく救い、分からず屋は遠回しに諭すといったように、個々の性質や状況に応じて救い方を変えるという方法を言います。全ての人をもれなく救うための様々な対機説法が、後々個立して発展したと言えます。

医療では鍼灸が対機説法の名人です。ただ鍼灸の場合は「同病異治」という言葉を使います。
「なぜ同じ不妊治療なのに人によってお灸するツボが違うのか?」「心臓の治療をするのになぜ他臓腑のツボに鍼をするのか?」このような疑問が時々聞かれます。例えば病院で心臓が弱いと診断されれば、心臓だけを強くする薬が処方されるからです。
しかし鍼灸は対機説法です。心臓の治療を例にとって説明しますが、分かりやすいように火に置き換えます。東洋医学で心臓は火の性質を持っているとされています。例えば、火を一定の火力に保つためにはいくつかの方法があります。火力が弱ければ燃料を足す方法、空気を送り込む方法、風を防ぐため周りを囲む方法、火力が強ければ燃料を減らす方法、水や塩を入れる方法、空気を減らす方法、このように一定の火力を保つという目的達成のためにいくつかの方法があるわけです。つまり、心臓という火は単独に燃えているのではなく、外部との「縁」によって程よく燃えているのです。この外部とは他臓腑を指します。これが心臓を助けるために他臓腑のツボに鍼をする理由です。

心臓以外も同じで、五臓六腑はそれぞれが単独で働いているのではなく、他臓腑との縁により営んでいます。他との適度な縁切りと縁組が治療なのです。(第16回補法と瀉法)
同じ人間なのに人によってラッキーカラーやラッキーストーンが違ったり、サプリメントの効く、効かないが生じるのも同じ理屈です。
それにしても縁切りしたい暑さが続きますね。この暑さから救われるにはどんな対機説法が必要でしょうか?昔の高僧が「心頭滅却すれば火もまた涼し」なんて言ってましたっけ…
無理無理、私に効く対機説法は冷房と琥珀色の飲み物です!


第126回香肌文庫 2016.8.1

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