香肌文庫 第99回 商いは風と又三郎
お店の宣伝には新聞やインターネツト広告、チラシの配布などを行いますが、最終的には既存のお客様による紹介や口コミが重要になってきます。無論自営の私もそう思っています。だからこそ残念というか、むしろ不思議に感じていたことがあります。それは当院を良く評価して下さる方々の紹介でみえる方は、当院と縁を持つ確率が意外に低いのです。もちろんどんな理由であれ「全ては自分の不徳」と考えなければ、商いとしても技術者としても発展がないことは言うまでもないのですが…。それにしてもこれまで紹介で来て頂いた方々が全て繋がっていけば、今頃は最高級のブランデーを片手に体が埋没してしまうようなソファーに座っていることでしょう。もちろん膝の上には毛むくじゃらで無愛想の猫もいます。
冗談はさて置き、自分の不徳以外にも何か原因があるのでしょうか? 「紹介して頂いたからには」という気負いは多少あったとしても診断や治療を誤ってしまうわけではありません。どうもこの事実、私だけでなく商売、ことに対人間の仕事にはある程度共通しているようなのです。やはり何か法則があるのでは?と考えた結果、出た答えは結局「陰陽」でした。
陰陽については東洋医学の根本原理でもあるためこれまでに何度も触れてきました。陰と陽は-と+、凹と凸、女と男です。つまり人間同士の相性も一方が陰でもう一方が陽であると引き合うわけです。ただし相性の陰陽は目に見えない「気」の陰陽なので陰陽関係になっているのかどうかはよく分かりません。好き嫌いで判断することとは次元が違います。
仮に私が陰の場合、当院に縁がある人は陽です。そしてその利用者さんが仲の良い友人を紹介するわけですが、紹介者と友人は仲が良いわけですから当然陰陽関係です。つまり友人は陰と言えます。その陰の友人が陰の私の所へやって来るわけですから引き合い難いのです。
飲食業などはあまり関係がないかもしれませんが、治療院のように人間同士が向き合う場合は影響します。
もちろんそれほど親密でない方を紹介する場合はあまり影響しません。
中には紹介されて来た友人の方とも縁があり、リピーターになって頂くことがありますが、その場合不思議
と紹介者の方が遠くなることもよく経験します。
確かに三人組って「陰ー陽ー陰」か「陽ー陰ー陽」必ず一か所に陰同士、陽同士の関係を含んでいるんですね。つまり紹介や口コミの本質は、風の噂と又聞きで来た人が多くを占めているのでした。
第99回香肌文庫 2014.5.1