鍼灸 千葉 習志野 津田沼

91回 順証と逆証


「男と女はどちらが浮気症か?」という議論がなされ、「やっぱり男の方だろう」という結論になるも、「相手するのは女だよ」

ということで結局答えが出なかったという漫談のような話があります。

実際どちらが浮気症なんでしょうか? この問題を東洋的思考法で考えると、男の方が浮気症であることがわかります。

男性から出る多数の精子を女性は一精子しか受胎しないからです。つまり男性は気が多く、女性は一途というのが自然です。


東洋的思考法とは「諸現象から本質を探る」という方法です。


東洋医学の診察では、「順証」か「逆証」かということを重視します。順証とはその病にふさわしい症状を呈している場合で、

逆証とは病と反する症状を呈する場合を言います。例えば高熱を出している人の顔が赤く、脈も速く、苦しそうにしていれば

高熱にふさわしい症状なので順証です。しかし高熱にもかかわらず青白い顔をして、脈もゆっくり打ち、グッタリしていれば

逆証であり危険です。 つまり順証は心配のない病、治りやすい病であり、逆証は危険な病、治り難い病ということです。 

冒頭の浮気の話ですが、男の浮気なら順証、女の浮気は逆証ということです。もちろん順証といえども病ですが…。

そんなことからか江戸時代では女性の浮気は重罪だったようです。


寿命が尽きようとしている人も急に顔色が良くなったり一時的に元気になったりすることが多いものですが、これも逆証であり

臨終が近い証拠です。反対に「もう死ぬ、もう死ぬ」と騒いでいる人はまだまだ大丈夫、順証です。

いつも強気の人が優しくなったり、おとなしい人が荒々しくなるのも逆証であり、後々病にかかります。


鍼灸院では救急車を呼ぶような逆証はまず来院しませんが、軽症なりに順証か逆証かという診方は常に行います。

よく見られる逆証が「季節にそぐわない体」です。夏の暑い時期に冬の体をしていたりするのです。冷房や冷飲料の取り過ぎが

原因と思われますが、診察すると脈は沈脈と言って深い所で打ち、体が重く、腰痛があったりします。また、こういう体になって

いる人が炎天下に出ると熱中症を起こしやすいのです。ペンギンを砂漠に放つような行為です。

病気だけでなく、この順か逆かという見方は物事を決める尺度にもなります。この投資は時代に順か逆か?この仕事は自分

の性格に順か逆か? 安全に行きたいなら順を選ぶべきであり、大穴を狙ったり大衆の目を引きたいのならあえて逆を生かす

技も必要となります。逆を生かす技を「逆転」と言います。


鍼灸治療は「同病異治」と言って、同じ症状でも人によって使用するツボが異なります。つまり合性の良いツボを選ぶのですが、

合わないツボに治療をすると、本人が自覚できなくても即座に脈が乱れたり、皮膚がザラついたり、顔の血色が悪くなります。

これは薬やサプリメントでも同じことが言えます。

現在自分のやっていることが順なのか逆なのか分からないことも多いものです。例え理屈で正しくても周囲から素晴らしいと言わ

れることでも自分にとって逆なら、常に顔の血色も悪く、笑顔も少なくなっています。またケガや病気もしやすくなります。

春に咲く花、秋に咲く花、逆順の中に逆順があるのです。

                                                 
2013.9.1        
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