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香肌文庫 第90回 私は誰?

現代医学に慣れ親しんでいる私たちは、感情や意志、性格は脳の成せる業と考えています。
近年では脳科学の研究も進み、「脳の鍛え方」「脳が人生を変える」など、一般向けの面白そうな本も多数出ています。まさに脳ブームと言えるでしょう。
それでは数千年の歴史を持つ東洋医学では脳をどのように認識しているのでしょうか?
二千年前に書かれたとされる鍼灸の古典には、脳や髄の記述があり、既に認識されていたようです。
ただし、現代医学のように脳を全ての司令塔、発信元といったような見方はしておらず、少し変わった臓腑ということで「奇恒の腑」という書かれ方がされている程度です。東洋医学では感情や意志は脳ではなく、「五臓」から出るものとしています。
例えば積極性や怒りは肝、知性や喜びは心、平等性や思慮は脾から発するとしています。臓器が意志を持っているなど現代医学からは考えられないことです。はたして古い時代ゆえ、脳についての解明が不十分だったのでしょうか?ここに面白い実験報告があるので紹介します。1980年代にカリフォルニア大学でリベット博士が行った実験です。脳に電極を付けられた被験者が、「指を動かそう」と意図してから実際に指が動くまでの経過を計測するのです。

1.被験者が指を動かそうと考える  2.大脳から指を動かす指令が出る  3.指が動く

そして誰もがこの順番通りの結果になると予想していました。しかし結果は何と、2→1→3だったのです。この結果は追試しても同じ結果だったようであり、論争となりましたが、その謎は未だに解明されていません。  
この実験結果から想像できることは、「自分の行動は自由意志ではない」ということと、「脳に働きかける何かがいる」ということです。私は東洋医学を信じていますので、この脳に働きかける「何か」こそ五臓ではないかと思うのです。やはり鍼灸の古典が言うように、「こころ」は五臓より生ずるのかもしれません。
私たちの体に住む体内微生物は500種を越えるそうです。これら体内微生物が臓腑と共に消化作用や免疫作用まで担ってくれているのです。こうしたことから「臓腑は微生物が進化または巨大化した姿」とする説まであるそうです。臓器移植を受けた患者の食物の嗜好がドナーに似てきたり、性格まで変わってしまうという内容をTVで見たことがあります。どこまで真実なのかは分かりませんが、感情や意志が脳ではなく五臓から出ているのなら少しはあり得そうな話です。
私たちは様々な微生物や意識を持った臓器、細胞が集まった姿なのかもしれません。一個人は集合体なのです。この体は誰のもので私は誰なんでしょう?暑さで頭がおかしくなったようです…。   

第90回香肌文庫 2013.8.1

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