香肌文庫 第83回 四年後のメダル
あけましておめでとうございます。巳年がスタートしました。巳は動物のヘビにあてられていますが、本来は「紀」の字から来ています。紀には「止まり始まる」「終始点」の意味があります。十二支は地上から見た一年の太陽の位置を十二分割したもので、十二ヶ月を知るための符号として用いられています。また、それを拡大して年を表したり、縮小して日時を表すのにも用いられています。子の刻だとか丑三つ時などと聞いた事があるかと思います。
巳は月では五月に相当します。ただし現在使われている太陽暦に比べると、季節感が約一ヶ月先となります。
この頃になると草木の伸長は止まり、ここから内在的に結実作用が始まります。人間で言うと少年成長期が終わり、成人成熟期の始まる起点になります。そしてこの結実作用が実として表面化し、熟成するのが四ヵ月後の酉月(九月)です。酉とは「醸」の字から来ており、「醸成」「醸熟」の意味があるのです。
やがて実が落ちて種となり、四ヵ月後の丑月(一月)になると種からチョロリと地中に根を出します。このチョロリと出た根が「紐」ヒモに見えることからこの月に「丑」の字をあてました。
この巳から始まった結実作用が酉で実と成り、丑で次の実の種となる一連の流れを「三合」と言います。
三合は巳酉丑の他にも収蔵作用である申子辰、発芽作用の亥卯羊、開花作用の寅午戌の四種類があります。 私たちも生まれ年の干支がこのグループ同士だと良い相性と言われています。
そしてこの三合から分かることは、現在起こった現象は四年前、四ヶ月前、四日前、八時間前から始まっているということです。時間が八時間なのは二十四時間に十二支をあてるためです。
原因の分からない病気もこの理論で遡って考えると「あっ!」と気付くことがあります。年月日時のいずれで考えるかの問題ですが、治り易い病、激しい病は日時で考え、治り難い病やストレス性の病は月や年で考える必要があります。強烈な原因はすぐに出やすく、些細な原因は後々になって出てくるとも言えます。また治療効果の出る時や病の治る時期もこれを応用して推察することができます。鍼灸治療が対象とする十二経絡も全て十二支が配当されています。
三千年以上も前の「殷」の時代にはすでに使われていた十二支の考えは、今も鍼灸医学でとても重宝されているのです。不断に流れて行く時間をストップさせ、断片化することのできる十二支は、デジタルであり科学です。十二進法が森羅万象を理解するためには最も都合のよい分け方とも言えます。
今年精一杯がんばって四年後に良い実を結びましょう!
第83回香肌文庫 2013.1.5