0598-31-1809受付時間:AM9:00〜PM6:00 
休診日:木曜・日曜・祝日

香肌文庫 第65回 『老子』 

鍼灸治療が陰陽論で成り立っていることを度々触れています。「表面に出ている症状の裏側を診る」ということです。簡単に例えるなら、硬く凝っている(凸)所があれば必ず虚弱(凹)している所があるのでそこを治療するということです。
陰陽論は医学だけでなく様々な分野に生かされてきました。中でも浮き世の姿を陰陽で見すかした傑作が
『老子』です。老子は書名でもあり著者名でもあります。紀元前に生きた中国の哲学者です。古代中国の哲学者と言えば日本では『論語』の孔子の方が有名ですが、欧米では東洋哲学=老子・荘子だそうです。私も少々堅苦しい論語よりも老子が好きです。今回は老子の教えをいくつか紹介したいと思います。

曲がれば則ち全し
真直ぐな木は有用な材木として伐採される憂いがある。しかし曲がりくねった木は役立たずとして用いられない反面、木として自己の生命を全うすることができる。つまり自己の聡明叡智などを現し示さぬことが自己を全うする唯一の方法である。

民、利器多くして国家ますます暗し、人、技巧多くして奇物ますます起こる。
世の中に便利な物が多くなると、かえって世の中は混乱する。また、人に技術才能が多くなると怪しげな奇物がますます世出てくる。

信言は美ならず、美言は信ならず、 善者は弁ぜず、弁ずる者は善からず。
真実味のある言葉は決して美しく飾ったものではない。反対に美しく巧みな言葉は真実味がないものである。真に善行をなす者は善を衒って口先で弁じ立てることはせず、口先で得意に弁じ立てる者は実は善行をなさないものである。

天下皆美の美たるを知れば、これ悪のみ。皆善の善たるを知れば、これ不善のみ。
皆がこの美が美であると認識する場合には、すでにその反面において必ず悪の存在を認めている。また、この善が善であると認識する場合にはかならず不善の存在を認めているのである。つまり、悪あっての美、不善あっての善という愚かな世である。

大道廃れて仁義あり。智慧出でて大為あり。六親和せずして孝慈有り。国家混乱して忠臣あり。
仁義などが世に唱道されるのは道徳がすたれたためである。同様に親孝行だの愛だの唱えられるのは互いに和合しないからであり、また忠臣などが世にたたえられるのは国家混乱しての結果である。

以上いくつか抜粋してみました。もっと知りたい方は図書館や本屋の中国古典の棚に置いてありますので行ってみて下さい。ただし日本は孔子様の仁・義・礼・智・信が尊ばれる国です。あまり老子にかぶれ過ぎますと
ひ・ね・く・れ のレッテルが貼られてしまいますので適当に!                    

引用・参考文献 諸橋轍次著『老子の講義』/大修館書店          

第65回香肌文庫 2011.7.1

営業日カレンダー

× ×

お問い合わせフォーム

鍼灸専門カササギ堂

〒515-0073
三重県松阪市殿町1540-37
TEL 0598-31-1809