香肌文庫 第61回 未病を治す
東洋医学に「未病を治す」という言葉があります。TVのCMでも使われていたので聞いた事がある方も多いでしょう。意味としては「病気にならない体を作る」など予防医学の意味で使われているようですが、本来の意味は少し違います。
未病を治すという言葉は二千年以上前に書かれた鍼灸医学の古典に出てくるのてすが、古典ではあくまでも病人の治療について書かれており、「既にある病が次に移る所を先回りして治してしまう」という鍼灸の達人技を述べています。
難しい話はさておき、なぜこれから起こりうる病が予測できるのでしょうか? 一つには症状の自覚よりツボの反応の方が早く現れるということが言えると思います。私は達人ではないので簡単な例えしかできませんが、風邪の初期によく反応が現れる金門というツボがあります。風邪の症状が無くてもこのツボに反応が出ていることがよくあります。放っておくと次第に首の後ろが凝ってきて寒気を感じてきたり腰痛が出てきたりするのですが、このツボに施術することによりあらかじめ症状を最小限にくい止めることができます。
古典では、巳病(既にある病)を治せるのは中程度の医者、未病を治せるのは上等の医者と締めくくっています。目前の苦痛から救ってあげるのは中級、何事もなかったかのように救ってあげるのが上級ということです。
我々の日常でも上級の優しさは、目に見えず形にもならずにひっそりと存在しているのでしょう。感謝。