香肌文庫 第55回 揺さぶり
正攻法ではまったく勝算がない場合、奇策という手があります。十年程前、鍼灸治療の奇策とも言える方法をある名人から口伝してもらったことがあります。詳しくは書けませんが、なかなか変化のない症状に対し、あえて正反対の治療を施すことによって悪化という動きを生じさせ、後に正しい治療法に戻すというものです。つまり「揺さぶり」です。押してダメなものは引いてから押すということです。ただしこの方法は患者との信頼関係はもちろんのこと、患者の体質、体力、本来の正しい治療法を熟知した術者のみ行えることです。やみくもに悪化させれば良いというものではありません。奇策とは正攻法を完璧に知る者のみが出来るのです。
さて、もうすぐ代表選挙、政界が騒がしくなっています。街行く声は「誰でも同じ」「どうせ変わらない」など残念な声が目立ちます。もう「揺さぶり」しかないのでしょうか? いやいや、正攻法すらまだなされてない気がしますね。
第55回香肌文庫 2010.9.1