香肌文庫 第54回 精神の宿る所
東洋医学では精神は五臓に宿ると考えています。古典に「肝は魂を蔵し、心は神を蔵し、脾は意を蔵し、肺は魄を蔵し、腎は志を蔵す」としています。肝に宿る魂とは積極的な力です。肝の力が充実している人は何事にも前向きで行動力があります。外見の特徴としては面長で眉毛が秀麗です。話し方も歯切れが良く、やや甲高い声をしています。
心に宿る神とは物事を明確にする力です。心の力が充実している人は直感力に優れ、事の本質を見抜く力に長けています。外見の特徴は目が大きく頭頂部が尖っています。肩はいかり肩です。
脾に宿る意とは物事を熟慮して整える力です。脾の力が充実している人は物事を和合させ平衡にする能力があります。外見の特徴は穏やかな話し方で物腰も柔軟です。関節の節々が発達しており、肌肉(皮下組織)も柔らかい人が多いです。
肺に宿る魄とは魂の積極的な力とは反対の抑止する力です。肺の力が充実している人は感情的に流されず冷静で理性があります。外見の特徴は呼吸器が発達しているため頬骨が張り、胸郭も大きめです。皮膚は固く締まっています。
腎に宿る志とは最も深い所で働くもので、根気とか根性と言えます。腎の力が充実している人は艱難辛苦にグッと耐える力を持っています。外見の特徴は耳タブや顎がふくよかであり、体と比すと顔が大きく見え、ベビー体型をしています。足首が太く、歩き方がヒョッコヒョッコとしています。
以上五臓それぞれの精神作用と外見的特徴について古典に書かれていることに私自身の経験を加えてまとめてみました。五臓それそれが均等にバランスよくあるのが理想ですが、大抵はどれか一つが主体になって働き、他の臓も力の差を持って成り立っています。これが個性となり誰一人として同じにはなりません。
五臓を傷める生活をしていると、機能低下した臓の精神作用が弱くなったり、長所が短所に変わってしまいます。五臓を傷める生活や五臓に力を与える方法については後日書きたいと思います。
第54回香肌文庫 2010.8.1