香肌文庫 第48回 風邪を引いて
先日風邪を引いて寝込んでしまいました。健康を提供する立場だけにお恥ずかしい限りです。今回はこの経過について屁理屈をまじえながら辿ってみたいと思います。
最初に娘が38.5度の熱を出しました。様子を見ると赤い顔してフーフーと息をし、脈はトトトと高速です。
まずは安心しました。高熱の症状そのままだからです。これが高熱にもかかわらず顔色が悪かったり脈が遅かったり、嘔吐を伴っていれば直ぐに病院です。これを症候不一致と言います。娘は幸い症候一致なので温かくして家でゆっくり寝かせました。熱は免疫力を高めて病邪をやつける現象なので解熱剤は与えず、自然治癒力を信じました。2日後にはケロリと治りました。薬で熱を急に下げなかったので後に咳や痰などもまったく残りませんでした。
さて、ホッとするのもつかの間、今度は私の番でした。子供から頂いたのでしょう。生命力ある子供の病邪は強いものです。病邪をもらうのはもちろん体力が低下している証拠ですが、強い病邪は比較的体力のある人に入り、体力のない人は弱い病邪しか入りません。発熱も体力のある人ほど出ます。年齢的にも歳をとるほど風邪を引いても発熱しにくくなり、咳や鼻汁などが長引く傾向があります。私は幸い38度を越える熱が出ました。「自分の体力もまだいけるな」と自己満足していました。しかし仕事もありますし、なるべく早く治したいものです。そこで少々荒いやり方ですが首の後ろにあるツボへ熱い灸を多めにすえました。このツボはマラリアなどの高熱に効くといわれているものです。お灸をして布団をかぶって寝ているとしばらくして大量の発汗がありました。このため熱が下がり体が楽に感じました。朝になって熱もだいぶ下がったようなので仕事へ行きましたが、これがとんでもないことになりました。体がフラフラし、とても仕事などやってられない状態です。熱もまた出てきた様子です。素直に早退しました。すぐに昨日のお灸のせいだと思いました。発熱は消耗性疾患であり体力の回復をまず第一に考え、それと並行して熱を下げるべきだったのです。体力が回復していないのに症状だけ消そうとするとこのような結果になってしまいます。これは風邪以外の病気でも同じことが言えます。家で反省しながら養生の鍼治療をしました。翌日にはどうにか復帰することができましたが、風邪は焦らず無理せず休養するのが一番だとつくづく思いました。
最後にお年寄りや衰弱した人が高熱を伴う場合は体力が症状に勝てない恐れもあり、解熱剤などを含め医師の処置が必要であることを付け加えておきます。
第48回香肌文庫 2010.2.1