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香肌文庫 第36回 五年目を迎えて~鍼灸伝説・前編

当院もこの秋で五周年を迎えることができました。我々医療系の仕事は他の職業と違って「いらっしゃいませ」とか「毎度ありがとうございます」などの挨拶ができません。とは言っても患者さんで成り立っているのは事実です。今日は飾らずにこの場を借りて素直に御挨拶させていただきます。
いつも当院をご利用いただきありがとうございます。今後ともよろしくお願いいたします
これまで様々な方にお会いすることができましたが、やはり嬉しいのは警戒の目で恐々来られた方が当院をきっかけに鍼灸というものを知り、元気になり、その素晴らしさを他人に伝えてくれることです。我々の仕事はもちろん病める方を元気にすることですが、まだまだ一般的でない鍼灸というものを普及することも必要なのです。そこで節目を迎えた今回はあらためて鍼灸というものを紹介し、誰かに鍼灸の紹介をする時、またこれから鍼灸を受けようと思っている方に一読してもらえればと思います。

鍼灸が他の医学に絶対に負けない所はなんといっても歴史の古さです。中国湖南省で発掘された馬王堆(まおうたい)遺跡から出土した鍼灸関係の医書が現在確認されている最も古いもので、紀元前186年頃と推定されています。つまりおよそ2200年前です。もちろん書物は後からまとめられるわけですからさらに遡るわけです。日本という国はまだ存在せず、幻の卑弥呼も邪馬台国もこれよりずっと後の話ですから気が遠くなるような古さです。ちなみに西洋医学の始まりは18世紀ですから既に2000年近いひらきがあります。鍼灸は中国の動乱の歴史を乗り越え異民族支配になっても生き残ります。
日本に伝えられたのは文献上では奈良時代となっています。日本でも針博士という官職ができ、日本最古の医書である「医心方」の著者 丹波康頼らが知られています。余談ですが、俳優の故・丹波哲郎はその末裔だそうです。以後鍼灸は我が国の医療の中心となり、江戸時代にオランダから西洋医学が入っても「蘭方」「漢方」と区別し、廃れることはありませんでした。しかし鍼灸にも暗黒の時代がやって来ます。急速な西洋化を進める明治政府が「西洋医学を学んだ者のみ医者と認める」という制度を作り、法律で漢方・鍼灸を撲滅しようとしました。鍼灸は盲人の職業手段として何とか温存されたものの衰退をたどります。また昭和の戦後には、GHQ政府が鍼灸を「非科学的」「野蛮で不衛生」などの理由で廃止しようとしたのです。しかしこれを唯一の生活手段とする盲人鍼灸師が多数存在したことや不衛生とはいっても何の事故も起きてないことなどから何とか廃止は免れました。(現在では消毒が義務付けられている鍼灸ですが、消毒などしなかった長い歴史の中でもまったく感染等の事故はありませんでした。それほど鍼灸はローリスクなのです)そして医療の中心は西洋医学となり、鍼灸は医療類似行為として場末に追い込まれたのです。また、東洋医学とは何の関係もない按摩・マッサージと一括りにされ、医療というよりは慰安目的のものと見なされるようにまでなってしまいました。
以前はあらゆる疾病を対処してきた鍼灸が単に肩こりや腰痛の改善手段程度にしか認識されなくなってしまったのです。(次号につづく)


古代のツボの教科書『十四経発揮』と紀元前にまとめられた鍼治療の書『黄帝内経霊枢』

第36回香肌文庫 2008.10.1

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