第217回 名前に潰される
病院をはしごする人がいます。人にもよりますが、多くは比較的元気であるが気になる症状があり、検査しても異常なし、でも納得いかずに医療機関を点々とし、やっと「〇〇〇症」という別名「ワカリマセン」といった病名を頂き、納得します。人は名前をもらうことで得体の知れないものを実体化して納得しようとします。例えばハラスメントの種類も今では数え切れません。この名前が誕生したことで救われる人も沢山います。~ハラスメントという名前が付けられることで公的に犯罪と認められる事例が沢山生まれました。ただ、この言葉で身動きが取れなくなっているのも現状です。名前を付けることで通常を異常に変えてしまうことも多いのです。
究極の名付けは数字ではないでしょうか。血圧、骨密度、筋力、視力…健康も自覚ではなく数字で決定されます。すごく元気でも少し血圧が基準値?を越えると病人にされ、自分自身の健康も数字で示されないと納得できません。「あの人頭いい!」と思ってもIQが低ければ「なんだ違うのか」となり、どんなに素晴らしい物でも値段が安ければ「B級品」となります。
その点鍼灸治療は数字とは無縁です。その人の脈に従って血色を良くし、食欲を増進し、明るい気持ちにします。その人を現在できる最高の状態にします。検査値が標準からズレていても関係ありません。むしろ強い薬で標準値をキープしている人の方が鍼灸の脈診からみれば不健康になっています。
しかし近年「東西医学融合」という素敵に装った恐ろしい名前が囁かれようになってきました。鍼灸治療も病院下で数字コントロールされるようになるかもしれません。そうなったら潰されるので逃げます、山に籠ります!
第217回香肌文庫 2024.3.1