第216回 チャンスは間接的に
鍼灸院へ来られる人の中で、治療する前から「この人は良い結果になるだろう」と予測できる人がいます。それは、友達にチラシをもらって来院した人、付き添いで来たので試しに受けてみた人です。実はここに幸運のヒントがあるので、今回はそれをまとめてみたいと思います。まず、チャンスとはどのようなタイミングでやって来るのかを考察すると、次のようなケースが多いことに気づきます・買うつもりはなかったが、友人が宝くじを買ったので自分もついでに買ってみたら高額当選した。
・レギュラーがケガしたので代理で打席に出たらヒットを放ち逆転勝利した。
・親戚が勝手にモデルのオーディションに応募したら最優秀賞に選ばれた。
・ケガしたので病院で検査したら偶然ガンの早期発見ができた。
・友達の結婚式に出席したら、そこで良い人と巡り会えた。
これらに共通して言えることは、「間接的」であるということです。間接的にもたらされるチャンスは自然の恩恵で向こうから転がり込んできます。自ら「直接的」にチャンスを得ることもできますが、その場合はそれなりの苦労努力が必須となってきます。
もちろん間接的な誘いや頼まれ事が災いをもたらすこともあります。ただ、その判断は決して難しくはありません。それは上手い話を持って来られた時や、損得勘定して得だから引き受ける場合です。この場合は大抵が好ましくない結果となります。
『易経』には「無私」で行動したかどうかが運命の分かれ道であると説明しています。注目すべきは『易経』が理想の生き方を説く宗教や哲学の書物ではなく、情けの入らない占術の書であるということです。
悪魔は天使の装いでやってきます。そこに私利私欲が発生するなら要注意です。そして一見面倒くさい頼まれごとや誘いこそが天使の導きなので躊躇せず「よし来た!」と引き受けることです。「無私」な態度であればこそ間接的チャンスが転がり込んできます。
第216回香肌文庫 2024.2.1