香肌文庫 第210回 官が入ると…
この猛暑でミャンマーを思い出します。「ビルマの土は赤い、岩もまた赤い」と映画「ビルマの竪琴」の台詞にもあったミャンマーは最高気温が40度を越える灼熱の国で、「涼しい」と「幸せ」は同じ言葉であることからもその暑さが伺えます。とにかく昼間の太陽はヒリヒリと痛いのです。今、それと同じ痛さを日本で感じています。下の写真は二十代の頃旅したミャンマーの古都パガン遺跡です。
昼間は暑いので現地の人はほとんど外に出ませんが、石造りの遺跡の中はかなり涼しく、子供たちの恰好の遊び場となっていました。観光でやってきた私を子供たちは明るく迎えてくれ、ガイドまでしてくれました。
帰りに案内してくれた少女が紙で作った可愛らしい蝶々をお土産にくれました。今でも貴重品入れに保管してます。プラチナより高価です。しかし観光客も疎らだったこのパガン遺跡も四年前に世界遺産に登録されてしまいました。おそらく子供たちは遊び場を取られてしまったことでしょう。官が入るとろくなことありませんね。
安全装置がすぐ作動して中々焼けないトースター、力を入れないと押せないライター…
そして鍼灸にも官が入りました。厚生労働省です。鍼灸が民間療法から国家資格の医療行為に格上げされてからは施術料金の掲示禁止、適応症の病名記載禁止、「治す」という文字の使用禁止などの圧力がかけられました。病名や「治す」という言葉は医師以外は使うなということらしいです。もう一つの官はWHOです。日本人はWHOと聞けば錦の御旗のように崇めていますが、WHOがやったことは、ツボの位置の国際標準化です。学識者が話し合いで個々に違って当然のツボの位置を世界統一し固定化したのです。官が入るとろくなことありませんね。
パガン遺跡に祀られている仏様は世界遺産にしてもらって喜んでいるのでしょうか?そうは思えません。それよりは子供たちと一緒に過ごしたかったはずです。日本の仏様は無表情で仏頂面という言葉もあるくらいですが、ミャンマーの仏様はアルカイックスマイル!子供達を見守る優しい笑顔です。今はどこで暑さを凌いでいるのでしょうか。日本も痛い暑さが続いています。暑中お見舞い申し上げます。
第210回香肌文庫 2023.8.1