香肌文庫 第204回 天人地
手相が分からない人でも生命線がどの線であるかくらいは分かるのではないでしょうか。この生命線が途切れていたり弱々しいと病気がちであるとか短命であると言われています。しかし、実際は短くて弱々しい生命線で長寿の人もいます。「だから占いは迷信だ」と思われてしまうのですが、生命線が悪いのに健康で長寿という人には共通の事実があります。それは頭脳線がずば抜けて良いのです。逆に太く長く刻まれた良い生命線を持つ人でも大病をしたり夭折である場合がありますが、この人たちは頭脳線があまり良くないのです。
手相は上から感情線・頭脳線・生命線の三大線が基本なのですが、感情線は性質、頭脳線は理性、生命線は肉体を表しています。つまり、感情線や生命線は与えられた車体、仕様であり、頭脳線は運転手です。
車を生かすも殺すも運転手次第なのです。このように物事を理解するための三つの分け方を東洋では「三才」とか「天人地」と言います。天は感情線、地は生命線で先天力、人は頭脳線で自分自身を示す後天力です。
もう一つ占いで例えますと、姓名判断も同じ構造から成っており、姓の画数が天格、姓の一字と名の一字を足したのが人格、名の画数が地格となっており、それぞれ仕様、運転手、車体とみます。姓名判断で名前をつけるとき、全ての文字を足した総格(総合運)を最も重視する人が多いのですが、本当に大事なのは運転手である人格なのです。
そして当然のことながら、東洋医学にも天人地の三才理論が入っています。頭~横隔膜を上焦(天)、腹部を中焦(人)、下腹~足を下焦(地)としています。上焦は呼吸循環器系、中焦は消化器系、下焦は泌尿生殖器系となります。そしてなるほど、ここでも上焦や下焦が「先天の気」、中焦が「後天の気」と説明しています。
人である中焦の消化器系が健全であることが健康のバロメーターです。死とは心臓が止まることではなく、食べられなくなることです。生命は後天の気から尽きるのです。東洋医学で元気のことを「胃の気」と表現するのも言い得て妙ですね。
第204回香肌文庫 2023.2.1