香肌文庫 第202回 小さな刺激で大きな効果を!
早くも師走となりました。私事ではありますが、今年は父、母、師匠と、私にとって大きな存在である三人を失ってしまう悲しい年でありました。それでも月日の経過に癒され、先日は秋晴れの下、清々しい気持ちで京都の妙心寺へ両親の納骨に行って来ました。その時に和尚さんが「恩」についてお話してくれました。「恩」という字は心の上に因と書きますが、この因は印と通じているそうです。印は印鑑です。古代の印というものは力を入れて押すものではなく、粘土のような柔らかい版に力を入れず印の重みだけで文字を刻むもので、力を入れてしまうと文字が潰れてしまいます。このように印や因にはそっと刻む意味が込められているのです。つまり、さりげない優しさや言葉、目立たない気遣いこそが後々因として心に刻まれる、それが恩なのだとお話してくれました。
カササギ堂が宣伝文句にしている「小さな刺激で大きな効果を!」のキャッチフレーズは師匠が使用していたものを勝手に拝借しているのですが、痛い鍼、熱いお灸は体を委縮させ、却って効果を無くしてしまいます。経絡やツボは皮膚の表層に存在しているため深く刺して電極を付けたり、火傷するような灸をする必要はありません。また、不思議なことに強刺激よりソフトタッチの刺激の方が持続性があるのです。鍼灸医学ではこれを剛柔という表現で説明しています。剛は強で感じ方は速いがすぐに弱くなってしまい、柔は弱で感じるのは緩いが持続性があるのです。つまり細い鍼で浅く痛くないように刺すのが効果的なのです。
私たちが海や山など自然の中に身を置くと心地良いと感じ、心身がリフレッシュするのも木々や川、波などが耳には聞こえない20000Hz以上のゆらぎの高周波音を発していて、それを耳ではなく皮膚の受容器で感じ取っているからと言われています。ソフトタッチの鍼灸もさながら20000Hzの高周波です。
説教やアドバイスは脳で考えるもの、恩は肌で感じるものだから残るのですね。
私たちが救われるものは決して成功者の名言や論理的アドバイスといったメラメラした炎ではなく、暖炉の火のようにジンワリとした温かい眼差し、優しさです。
さて、今年最後の香肌文庫となりました。来年も「小さな刺激で大きな効果を!」をモットーに皆さまの健康をお手伝いします。きっとそれが三人への恩返しに繋がるのだと思います。いやいや、恩着せがましいですね…。
それでは良きクリスマスとお正月を迎えてください。一年間ありがとうございました。
第202回香肌文庫 2022.12.1
