0598-31-1809受付時間:AM9:00〜PM6:00 
休診日:木曜・日曜・祝日

香肌文庫 第190回 大国さま

治療院に来て頂いた方々のお話なのですが、娘が周囲の反対を押し切り危険な男と結婚しようとしているタイミングに自分が事故で大怪我をし、その結果娘が目を覚ましたかのように結婚を思い止まってくれたという母親がいました。あるお婆ちゃんは病気ばかりしがちなのですが、息子や孫の元気いっぱいな姿を見てはいつも喜んでいました。また、夫の厄年に自分が病気で入院をしたという婦人もいました。
私は他者の身代わりに難を被る代受苦の人、また代受苦の時というものがあるのだなあと実感しています。
もしかしたら自分が健康役でいられるのも病気役の方がいるおかげかもしれません。そう考えると病気の人に「お気の毒に」というのは失礼で、口には出さなくても「申し訳ない、ありがとう」といたわるべきです。
ちょっと考え過ぎかもしれませんが…

私は年末に暮れ参りをすることが好きなのですが、大国さま(大国主命)に会いたくなりました。大国さまは大きな袋を担いだ容姿が似ていることから金運の神である七福神の大黒さまと混同されるのですが、大黒さまの袋の中身は金銀財宝でも、大国さまの袋の中身は兄神たちに持たされた旅荷なのです。手ぶらで先に行く兄神たちの後を重い荷物を担いで大国さまは行きます。決して不機嫌ではなく上機嫌です。途中、ワニに毛を剝がされた兎を助けます。急いで兄神たちを追うなか、哀れに思い助けます。有名な因幡の白兎です。
私の想像ですが、大国さまはこのあと兄神たちに「遅いぞ、何をモタモタしてたんだ!」とこっぴどく叱られたのではないでしょうか。誰かが助かるとはこういうことですね。

「偉くなりたい、金持ちに成りたい、楽したい」誰もが多少なりとも望むことです。多くの親も我が子にそうなって欲しいと願います。でもちょっと怖いです。なぜなら荷物を持つ人より荷物を持ってもらえる人になりたい、なって欲しいと無意識に思ってしまっているからです。
大国さまの担ぐ袋は苦労であり涙でもあります。黙って荷物を持ってあげる人間こそ神であると私は思います。

早いもので今年最後の文庫となりました。来年こそはコロナ禍ではなくコロナ後と言える年になることを祈ります。一年間ありがとうございました。



第190回香肌文庫 2021.12.1

営業日カレンダー

× ×

お問い合わせフォーム

鍼灸専門カササギ堂

〒515-0073
三重県松阪市殿町1540-37
TEL 0598-31-1809