「体には多数のツボがある」というのは正確には間違いで、ツボというものは病になって初めて現れる反応点です。ですから、100％の健康体(いませんが)の人が来たなら、ツボがまったく無いため治療が出来なくなってしまいます。どこにも異常がなければ何も見えてきません。何か不調が生じたり、病気になることによってはじめて体質や体力というものを知ることができます。
鍼灸治療は病気が対象ではなく、あくまでも生命力を高める治療ではあるのですが、どこが不調なのかを見ることによってそれが行えるわけです。

さて、今季の冬は寒く、北日本では大雪による被害もありました。東北で起こったホワイトアウトという自然現象は、雪原において雪が乱反射し、白一色だけの世界となってしまい、まったく何も見えなくなる現象です。
私たちも綺麗な世界ばかり見ていると世間が見えなくなってきます。清濁併せ見ることで世間が立体的に見えてきます。美味しいもの、優しい人、綺麗な物、正義…これらも不味い、厳しい、醜い、悪が存在して初めて見えてくることです。
そこに影があることによって私たちは物事を見ることができるのですね。

第180回香肌文庫　2021.2.1