あけましておめでとうございます。お正月ということで、おみくじの逸話を二つご紹介したいと思います。
数年前、私はある神社と縁があり、初詣にみえた方々に新年の易占をしてあげるといったイベントをしておりました。社務所で休憩していた時に宮司さんが参拝者のおみくじを用意していたのですが、正月は凶のくじは省き、吉のくじしか入れていないのだと私にこっそり教えてくれました。
二つ目の逸話は父の話です。私がまだ千葉に住んでいた時、三重から遊びに来た両親を成田山に案内してあげました。そこで皆がおみくじを引いたのですが、私と父は吉のくじ、母だけは凶を引いてしまいました。
がっかりしている母に父は「そんなもん、もういっぺん引いたれ」と吉が出るまで繰り返し引かせたのです。

さて、この二つの逸話を聞いて多くの人は「それってあり？」と思われることでしょう。しかし私は神社の宮司さんが意図的に吉のくじしか入れなかったとしても、そのおみくじを引いた人は吉であり、父のやった行為も凶の搔き捨てであり、これもまた吉と思うのです。
赤ちゃんが生まれたら幸せに育つようにとあらかじめ良い画数の字で命名することや、吉の方角を選んで移転や旅行するのとまったく同じことではありませんか。両者とも「速効開運人」です。
病は対象にせず、とりあえず元気を取り戻そうとする鍼灸治療も同じです。
ならば「今年はどんな年になるか？」などと考えず、今すぐ吉に決めてしまいましょう。良い一年を！



第179回香肌文庫　2021.1.1