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香肌文庫 第176回 吉凶の分かれ目

おみくじの吉凶という言葉は、中国の古典「易経」が元になっています。易経の中には大吉や吉という文字がおよそ100箇所、凶という文字はおよそ50箇所あるのですが、おみくじのように理由もなく吉凶を決めつけるのではなく、なぜ吉なのか?どうして凶となってしまうのか?という理由が大変難解に書かれています。
私はこの難解な書物に長年振り回されているのですが、最近ちょっと気づいたことがあります。それは易経の中で種々雑多に書かれている吉凶話でも、吉には吉の共通点、凶には凶の共通点があったのです。
易経は何か行動を起こす時、何かトラブルが発生した時に無私の心で挑めば吉の結果となるが、名声や見栄、物欲など私利私欲が入ると凶に転じるということを様々な表現で全文にわたって説いているのです。
つまり、吉と凶の違いは「無私」であるかどうかということだったのです。
なるほど「無私の心で生きる」とは大変素晴らしいのですが、よほどの人格者でない限り我々が実践することは難しそうです…。かく言う「易経」も人々を統率する者、君子を対象とした書物です。我々は「無私」にはなれないのでしょうか?

「無私」になるとは他者を優先するということなのですが、これは決して自分が損して他者を富ますといったようなマゾ的な行為や宗教的修行を指しているのではなく、「私欲なら挫折しやすいけど他者のためなら頑張れますよ」「自分も吉となりますよ」ということではないでしょうか。ボクシングで世界王者にまでなった具志堅用高の動機が貧しい母を楽させるためだったこと、金メダル四連覇を勝ち取った伊調馨の思いが天国の母に捧げるためだったことなど、超人的な力はやはり「無私」でないと湧いてこないのです。身近な例でも、子供や家族のために頑張っている母親は無私であり、健康で強く大吉です。
ある有名なリウマチの専門医の話によりますと、治りにくいとされるリウマチでも人によっては症状がかなり軽減したり、検査値が良くなったりするそうです。これらの人に共通している事は、他人の看病で自分の病気にかまっていられない人であるとか、仕事が忙しくて休んでられないといった人たちだそうです。自然治癒力も無私になるほど強力になるようです。禅でも「自己を消す」ことを重視しますが、結局それが「自己を生かす」という大吉の結果に繋がるのでしょう。

第176回香肌文庫 2020.10.1

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