肝臓の働きが旺盛な体質を鍼灸医学では肝虚証と言います。ただ、東洋医学でいう肝臓は現代医学でいう肝臓(レバー)とは認識が違うのですが、ここでは触れません。
肝虚証体質の特徴をあげると、何といってもスタミナ(精力)があります。五種ある体質の中ではナンバーワンです。体型も筋骨質でがっしりしており、行動的で常に忙しく動いています。声も大きく明瞭です。性格的には情緒など皆無で現実的です。好嫌もはっきりしており、押しが強く、我慢は苦手です。

私は長年臨床をしていて気づいたのですが、社長をしている人は圧倒的にこの肝虚証体質の人が多いのです。それも引き継ぎや推薦の社長というより創業の社長です。仮に社長でない人でも肝虚証体質の人は男女問わず生活力があり、よく稼ぐ人ばかりです。東洋医学でも肝臓は「将軍の官」と呼ばれています。
何をもって成功者なのかという議論はさて置き、この事実から分かることは、起業して成功し大いに儲けるといった世間で言う成功者の第一条件は、頭脳や技術でもなければ人柄の良さでもなく、精力があるということです。決して肝虚証は頭脳がないとか人柄が良くないわけではありません。いくら成績優秀で有名大学を卒業し、良い職業に就いても、精力がなければ稼げないのです。
さらに言えば、精力があるから必死に働くことができ、結果的にお金を稼げるというのではなく、精力的な人の所へ仕事や財は巡ってくるようになっているのです。仕事や財の波動は精力的な波動であるため精力的な人に同調するのです。金運の御利益があるとされている神仏も決してお地蔵様や観音様といった癒し系ではなく、猛々しい毘沙門天や龍神となっています。私の業界を見渡しても、稼いでいる治療院は癒し系の先生より、自信に満ちた押しの強い先生ばかりです。毘沙門天や龍神は同じ波動を持った勢いのある者に憑依するのです。気遣いや行儀の良さは別の波動なので関係ありません。

夏休みが終わり子どもたちは学校が始まりますが、最近は登校日に真っ黒に日焼けしてくる子どもがいないようです。外で遊ばなくなったのと、休みでも塾や習い事に追われる子が多いからです。勉強して優秀な学校を卒業し、社会に出て立派に稼げる大人になってもらいたいと多くの親が考えています。しかし、算数や英会話がいくら優秀でも、それはソフトやアプリでしかありません。ハードウエアである精力、社交力、決断力を机上とは別の場所で培ってこそ、稼げる人間に育つのではないかと思います。

第163回香肌文庫　2019.9.1