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香肌文庫 第162回 癒しと活

手足には各臓腑に関連するツボがあります。また、背中にも臓腑に関連するツボがあります。
臓腑に関連している、臓腑の治療に使うということではどちらも同じなのですが、ツボの効用としてはまったく反対になるのです。簡単に言えば、手足のツボは臓腑に「活」を入れ、背中のツボは臓腑を「癒す」のです。
東洋医学では病を是動病と所生病に分けます。是動病とは弱ってはいるが充分に回復力があるといった病で、この場合は手足のツボを使い、「おい、元気だせよ」といった活入れを行います。一方、所生病は病に侵されてしまってすぐには回復できない状態です。ですからこの場合は背中にお灸などを行い、「無理しないで休んでいろよ」と癒してあげるのです。このため背中のツボは兪穴という名称で呼ばれています。
もし、所生病に対して是動病に行う活入れを行ってしまえば、元気の無理強いで、さらに弱ってしまいます。

つまり、是動病は軽症、所生病は重症ということなのですが、先に書いたことから論理的に考えると、軽症と重症では治療方法が正反対になるということなのです。
例えば、塩分というものは腎臓の最も重要な栄養源であり、生命の源でもあります。ですから塩分が不足すると腎機能は弱ってしまい、また弱った腎機能を回復するには塩分が必要なのです。
しかし、重度の腎臓病に侵されてしまった場合は反対に塩分を控えめにしなければなりません。腎臓病は所生病なので、栄養源を与えて無理に働かせようとしてはいけないのです。仕事量を減らして、ゆっくりさせてあげる必要があります。
よく、塩分の取り過ぎは腎臓に悪く、血圧を上げるからといった理由で減塩といった健康法を行っている方がいますが、これは危険です。健康な人が極端に減塩するのは却って腎機能を弱らせ、生命活動に支障をきたします。減塩が必要なのは腎臓病を患っている人だけです。

また、是動病→所生病は、若年→老人と置き換えることもできます。若年と老人で治療や健康法が反対になるのです。ここで気が付いたのはCMでよく見るお年寄りのサプリメントです。お年寄りに強壮や活性化といった効能のサプリが必要でしょうか?
生命をロウソクの炎に例えると、残り少ないロウソクを長持ちさせるには、無理に炎を大きくしない方が良いのではないでしょうか?確かに年を取っても若々しく元気でいられることは素晴らしいですし、私もそう願いたいのですが、それは自然にしていてそうであれば好ましいのであって、強壮効果だの活性化などと歌ったサプリメントが本当に年寄りに必要なのか、もしかしたら弊害があるのではないかとも思えるのです。
反対に若い人はチョロチョロと燃えていてはいけません。芯の周りだけが溶け、歪な形になります。元気に燃えることで綺麗な形で年を取っていけます。

さて、連日の猛暑で体も参ってしまいますが、活入れなどして頑張ってはいけません。熱中症になります。
適度なサボリ、クーラー、ビールの癒しが正しい治療法となります。     



第162回香肌文庫 2019.8.1

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