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香肌文庫 第160回 長野連続膝痛事件

まだ千葉で治療院をしていたときの話です。膝が悪くて通院している婦人が長野への旅行から帰って来られたのですが、長野に着いたとたん膝が激しく痛み出し、しばらく歩けなかったそうです。膝が悪いのを無理して旅行したからだと、その話を聞いた時は特に不思議にも思わなかったのですが、後日同じように旅先で膝が痛み出して大変だったという別の女性がみえたので、何気なく行った先を訪ねると、何とその方も長野だったのです…。
私は東洋医学の延長で易学の勉強もしていたので、これは方位作用によるものだろうと咄嗟に疑い、二人の婦人が千葉から長野へ出かけた日の方位盤をそれぞれ調べてみたのです。しかし特に凶方位へ行ったというわけではありませんでした。まあ考えてもみれば、膝の悪い人が旅先で痛くなることは充分起こり得ることで、怪奇現象のごとく騒いでいる私の方がよっぽど怪奇な奴かもしれません。ただ、二人とも到着してすぐに痛み出したという共通点が引っかかていたのです。

膝の痛みはどういった場合に起こりやすいか?第一には、無理をして膝関節に負担をかけた場合です。しかし二人とも特急列車でゆったり座っての旅であり、また、冷房を強くきかせる季節でもなく、冷えの疑いもありません。それでは関節に負担をかけなくても痛くなるのはどんな場合か?多くみられるのが雨の降る前、低気圧が接近した時です。「そういうことか!」答えが出ました。原因は長野県の標高です。人の住まない高山を除き、日本の都道府県で標高が最も高い位地にあるのは長野県であり、それによる気圧の低さが災いしたのです。後から調べて分かったのですが、最も標高が低いのは千葉県だそうです。つまり最も標高の低い県から最も標高の高い県へ特急で移動したわけですから、気圧の急な変化に体がついていけなかったのです。
そのため、到着したとたんに激痛が起こり、気圧に順応していくにつれ治まっていったと考えられます。

関節内は袋のような構造をしており、スナック菓子の袋のように気圧が低いと膨張するため、周囲の神経組織を圧迫して痛みがひどくなると考えられます。膝が痛いときにサポーターで強く縛ると楽に感じるのも気圧が高まるからです。また関節の病だけでなく、低気圧が近づくと頭痛や嘔吐、ダルサ、ムクミなどを起こす人が最近増えているようで「気象病」といわれています。これも低気圧により体が膨張することによって起こる症状です。原因としては日頃の運動不足や糖質の過剰摂取があるのではないかと思います。甘味は緊張を緩めるリラックス効果はありますが、不必要に取り過ぎると体の気圧が下がり、膨張してしまいます。体はある程度の緊張が必要なのです。膨張してしまった体の気圧を高め良い緊張を取り戻すには、運動で汗をかいたり、熱いシャワー、柑橘類等の酸味を食すのが効果的です。

もちろん鍼灸も大変効果的です。低気圧による症状の人を脈診をすると脈が膨張したかのように太く感じますが、適切なツボへ鍼灸をすることにより、脈が締まって細く感じるようになります。治療とは体の気圧を調整することとも言えます。
さて、これから最も気圧の低い梅雨の季節を迎えます。体の気圧を高めて元気に過ごしましょう。
 
第160回香肌文庫 2019.6.1

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