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香肌文庫 第158回 生き残りの法則

当院に施術を受けに来たその人は、非常に生真面目で職業も役人といった堅実タイプの人だったのですが、
最近息子がプロのミュージシャンで食べていきたいと、絵空事のようなことを言い出して困っているというのです。まあ、世間ではよく聞く話です。これとは反対に、自営など比較的自由な職業の親を持つ子供が、公務員や銀行員などといった堅い職業を選ぶといった光景もよくあります。どちらの場合も親の社会人としての生き方や仕事の苦労などを見てきて疑問を持ち、自分は違う世界へ行こうと考えるのでしょうか。仮に親の仕事を引き継いだとしてもこれまでのスタイルを変えてしまい、そこで親子が衝突してしまう、これもまたよくある話です。しかしなぜ、子供ことに長男は親と違うことをするのか?なぜ親子は衝突するのか?ということを人間くさい話ではなく、少し冷めて科学的に考えてみると、そこには生き残りの法則、つまり種の保存といった自然の法則が働いているように感じられるのです。

鍼灸は同病異治と言い、同じ病気でも体質の違いによって使うツボが変わります。なぜ体質の違いがあるのかといえば、全てが同じ体質では同じ自然環境下で何か異変が起こったときに全滅する可能性があるからです。
また、他との違いだけでなく個体として見ても、左右同じツボに反応が出ないことが分かっています。つまり左右の同部位が同時に悪くならないようになっているのです。解剖学的に見ても左右の耳道や鼻道の形が同じでなかったり、眼も左右が同一にならないように設計されています。異変があってもどちらかが残るようになっているのです。

つまり、一方がピンチの時には助け合って生き残れるようにと、神様が敢えて私たちそれぞれを違った形、性質に作ってくれたのだと私は思うのです。そして異質の他人は自分の保険ということに気づきました。
それなのに我々は自分と意見の違う相手を否定し、仲間外れにし、攻撃します。助け合えるようにと、わざわざ違う形に作ってくれたのに本末転倒です。日本人が貴ぶ「和」も、決して「同じになる」というものではなく互いの違いを認める、違った同士尊重し合うということのはずです。そういった意味では外国人のほうが和の精神を持っているかもしれません。和という言葉も日本人の特徴ではなく、日本人への戒めの言葉となってしまいました。

仏典の中に素晴らしい言葉があります。「青色青光 黄色黄光 赤色赤光 白色白光」青は青く輝き、黄色は黄色く輝き、赤色は赤く輝くといった当たり前のような言葉なのですが、秀才は素晴らしい、だけどボンクラもまた素晴らしい、強い人も弱い人も、陽気な人も陰気な人も、リッチもプアもノッポもチビもみんな素晴らしい、他と比較する必要もなく何の優劣もない、それぞれが独自に素晴らしい。といった意味が込められています。

さて、四月になり気持ちの良い季節を迎えます。タンポポ、桜、すみれ、シロツメ、春は違った色がたくさんあるから綺麗ですね。人間もきっとそのはずです。

第158回香肌文庫 2019.4.1

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