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香肌文庫 第157回 霜を履みて堅氷至る

鍼灸院を訪れる疾患で多いものの一つにギックリ腰があります。洗顔のために前かがみになった瞬間、靴下を履こうと腰を曲げた瞬間などに激痛が走り、ひどいと動けなくなってしまいます。
ギックリ腰は正式には急性腰痛症といい、突然に起こる激しい腰痛の総称なのですが、実際は激痛に至るまでには腰が重い、足のシビレなどの小さな異変が前兆として起きています。腰と無関係な部位に異変が出ることもあり、ギックリ腰の前兆とは気付かない場合も多いのです。ギックリ腰に限らず急性や突発性という形容詞の付いた病名は、症状がMAXの状態だけを取り上げているに過ぎません。脳溢血や心筋梗塞なども必ず小さな異変が前もって現れています。
今回のタイトル「霜を履みて堅氷至る」とは『易経』にある言葉なのですが、「霜が降りたらやがて大地が凍りつく真冬が来ることを知りなさい」という意味で、「災いは突然にはやって来ない、必ず前兆があるので、これを見逃さずに対処しなさい」という戒めの言葉となっています。

病気に限らず、あらゆる大惨事は決して急性ではなく、小さな異変が連続した後にドカーンと来ます。なぜそうなるかと言えば、小さな異変が大したことないから気付かないのです。「大惨事の後で気付く」これぞ大惨事です。禅問答みたいになってしまいましたが、小さな異変が連続しているときは大惨事の前兆なので、針先のような穴でも塞ぎ、連鎖を止めることです。また、無関係な出来事も全てが関連していることを知らなければなりません。例えば車の運転で少しぶつけてしまい、傷や凹みを修理せずに乗っていると事故を起こしたり、ドライヤーの不具合をそのままにしていると次に冷蔵庫が故障したりします。病も惨事も個々ではなく、全て「期」で起こりますから無関係と思えるような出来事も全てが続きです。

怖い話になってしまったので別の角度から見たいと思います。
ギャンブルで大当たりする場合も、ちょこちょこ小さな当たりが続いているときや、最近ツキがあるといった後に起こります。何もかもハズレ続けている人が突然大当たりということはありません。
そうかといって、小さな当たりも買わなければ始まらないので、まずは少額でも当たる確率の高いものを狙います。こうして勝グセを付けていってから高額当選を狙うのです。

下世話な例えとなってしまいましたが、多くの悩みや問題を抱えているのであれば、絡まった糸をほぐすのと同じで簡単に解決出来ることを優先し、難しいことは後回しに放っておく。一瞬だけ悩みを忘れる楽しみを
生活に散りばめる。これが堅氷を解かす自然な方法です。
さて、季節も雪解けを迎えています。

第157回香肌文庫 2019.3.1

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