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香肌文庫 第156回 鍼灸の得意技

西洋医学が主流になってからは痛みや凝りの治療手段程度に見られてきた鍼灸ですが、もっと様々な病に効果的であると再認識されるようになってきました。そんな中で、最も鍼灸の独自性が発揮できることは何か?と考えると、そこには「心包(しんぽう)」の存在があります。それどころか現代人に最も多い病は心包の病とも言えるのです。
心包とは東洋医学独自の生体観なのですが、臓腑の一つでありながら「名前ありて形なし」とされ、唯一実体がありません。そんな心包が弱って現れる病も「名前ありて形なし」、つまり「症状だけで実体がない」といった病なのです。症状だけで実体がないとは、現代医学風に言えば自律神経失調からの諸症状ですが、病院では検査しても異常が見つからないため、症状を抑制する薬を出すのが精一杯です。自律神経失調症といった病名は「よく分かりません」という意味だからです。しかし、こういった病も鍼灸の診察では特定の経絡やツボに反応が認められます。その多くが心包に関係するツボなのです。そして心包を整えるツボに鍼灸をすることにより症状が改善されていくのです。

心包が弱る原因の多くは精神的ストレスなのですが、その症状は肩こりや頭痛程度のものから、精神不安定、不眠、最近多いと感じているのが耳鳴りや梅核気と呼ばれるノドの異物感です。耳鳴りは普通は聴こえない体内の音を感知してしまう現象、梅核気も正常なノドの組織を異物に感じてしまう現象です.人によっては正常な腸の動きを敏感に感じてしまい、腹の不調として訴える人もいます。いずれも症状だけで器質的異常のない「名前ありて形なし」といった病です。
結局健康とは鈍感力なのですが、その鈍感力が弱くなって過敏状態になってしまうのが心包の症状と言えます。ですからアレルギーも心包の病として治療すると効果があります。また体の症状だけでなく、人の話声がうるさく感じたり、細かいことを指摘するようになったりもします。

それでは心包とは何者なのか?昔から議論の対象にされているのですが、一般的には心臓を包む臓、つまり急所である心臓の防御的な存在と解釈されています。しかし、それだけでは解剖学で言う心膜のことになってしまいます。やはり「名前ありて形なし」をヒントによく考えてみる必要があります。形としてはどこを探しても確認できないけれど存在を認めざるを得ないもの…?なぞなぞみたいになってしまいましたが、私の答えは「こころ」です。精神的ストレスで心包が弱るという臨床事実から見ても、心包の「心」は心臓よりも「こころ」と考える方が適当であると思えるのです。

脳神経を覚醒させたり鎮める薬はあっても、心を癒す薬にはなりません。心は脳とは別ものであるとし、そこへ通じる経絡やツボまで明らかにして、臨床結果でも証明できる医学は鍼灸以外にありません。
心「こころ」への手技的療法、これこそ他にない鍼灸の得意技と言えるのではないでしょうか。

さて、今月立春を迎え暦では春となります。しかしこんなに寒いのに春?これも「名前あって形なし」ですね。


第156回香肌文庫 2019.2.1

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