香肌文庫 第113回 ウナギ食べたい…
「病はストレスから始まる」とは、今でこそ現代医学でも言っていますが、東洋医学では二千年も前に「病は七志(喜・怒・憂・思・悲・恐・驚)の乱れから」と認識していました。確かに臨床上、精神的ストレス由来の症状が非常に多いことを実感しています。それならストレスのない生活を送ることができれば、さぞかし健康でいられそうなものですが、そんな単純にはいきません。飛行機が風の抵抗なしには飛ぶことが出来ないように、人間もある程度のストレスがないと生きて行けないのです。ある学者は「生きる」と「ストレス」は同義語であるとも言っています。
日本で食べられている養殖うなぎは稚魚のシラスを輸入して育てるのですが、輸入先はアジアだけでは足らないため、カナダから輸入していた時期がありました。しかしカナダから空輸で運ぶと10時間以上もかかるため、最初の頃は運搬中にシラスの8割が死んでしまったそうです。そこで試しに、シラスの天敵であるナマズを一緒の水槽に入れて運んでみたところ、2割はナマズのエサにされてしまいましたが、8割は逃げ延びて元気で生きていたのです。
鍼灸の古典には「生命体は火の性質を持った水」と説明されています。相反する敵との拮抗状態こそ、生命力を鼓舞させる条件なのです。
さて、今月の土用丑の日はウナギを食べる日です。だけど高値ですね… 食べられるかな?我慢してストレス感じた方が元気になるのかな?
第113回香肌文庫 2015.7.1