0598-31-1809受付時間:AM9:00〜PM6:00
休診日:木曜・日曜・祝日

香肌文庫 第111回 やまとごころ

郷里である松阪の偉人に本居宣長がいます。子供の頃より名前は聞かされていましたが、『古事記』を解読した人、という程度しか知らず、特に興味もありませんでした。本居宣長が何をした人か、ということを後々知ったのは、上京してお会いした先生のお話からでした。
江戸時代後期を生きた宣長は、日本人の思想の中心となっているのは中国的思想(からごころ)や仏教的思想であるとし、これら外来の思想を取り払って見えてくる、日本人独特の物の考え方とはどんなものであるか、を追求します。そして何かと陰陽論をもって良し悪しを決める「からごころ」に対し、本来の日本人の心とは、簡単に陰陽善悪を決められない、白と黒の間である灰色の中で揺り動いているものであると気づきます。
つまり、YESとNO以外にその「真ん中」も肯定したのです。
それが「やまとごころ」であり、引いては「もののあわれ」であるとしました。
日本人のこのような態度は国際社会において、「曖昧」と否定されますが、しみじみと美しい文化や、他人を傷付けないよう気を配る、日本的優しさの源になっていることは間違いありません。

ところで、「やまとごころ」はどこから発するのでしょうか?
鍼灸治療では患者さんの体質を五つに分けて診察します。順番に挙げると肝体質、心体質、脾体質、肺体質、腎体質となります。順番と言ったのは、これら体質は個々に独立しているのではなく、春夏秋冬のように繋がっているためです。この中で日本人は、圧倒的に脾体質の人が多くなっています。脾体質は湿度と関連深いため、海に囲まれた風土のせいなのか、元々の遺伝子のせいなのかは分かりません。そして脾というものは五つの体質の「真ん中」であり、陰陽の二面性を持っています。そのため脾体質の人は決断するのが苦手で、偏りを嫌ってバランスを取ろうとします。「和」ですね。
このように、脾体質の多い民族から「やまとごころ」が生じるのは必然かも知れません。
宣長に嫌われるかも知れませんが、「やまとごころ」を「からごころ」(東洋医学)で分析してしまいました。

敷島のやまとごころを人問はば朝日に匂う山桜  
もし誰かに「やまとごころとはどんなものですか?」と尋ねられたら「朝日が照り付けて匂う山桜のようなものです」と答えることにしよう。
/本居宣長

第111回香肌文庫 2015.5.1

営業日カレンダー

× ×

お問い合わせフォーム

鍼灸専門カササギ堂

〒515-0073
三重県松阪市殿町1540-37
TEL 0598-31-1809