香肌文庫 第100回 鍼灸すれば幸せになれる!
キャッチボールに人生を感じる野球選手、材木の個性を人間に置き換えられる大工など、自身の仕事から社会や人生を考えられる人がプロと言えるのかもしれません。そういう私も未熟ながら鍼灸を通して色々なことを教わりました。開院から月一回のペースで書いてきたこのコラムも100回になります。今回はこれまで導いてくれた鍼灸に感謝を込め、大絶賛してあげたいと思います。鍼灸の世界に初めて入った頃に「鍼灸は根本治療」であると教わりました。枝葉に表れている症状は根っこ(五臓)を元気にすることにより治るということです。
症状や患部を直接攻撃する西洋医学を対象とした言葉なだけに「なんて東洋医学は素晴らしいのだろう」と感じていました。ただしこれは漢方薬には当てはまりますが、鍼灸は皮膚の表層を流れる経絡を整える施術です。表層部から根っこである五臓に影響を及ぼすものです。根から枝葉でなはくむしろ逆なのです。こんな基本的な勘違いに気づいたのは学校も卒業してしばらく経ってからでした。
「浅部から深部へ」とは表面から、外見から入るということです。人間関係も清潔な身なりと挨拶が後の信用に繋がりますが、それと同じことです。
外見から入ると言えば、「長財布を持つと金運がよくなる」という開運法があります。これは金持ちの人が共通して長財布を持っているからであり、金持ちの人を真似ることで自分の金運もアップさせようとするものです。半信半疑ではなく信じて真似ると本当に効果はあるようです。
鍼灸の話に戻りますが、現在はストレスから来る諸症状で来院する方が非常に多くなっています。
これらの方を脈診すると速かったり、固く緊張していたり、逆に締まりがなかったりしています。鍼灸治療により症状も脈も改善されるのですが、最終的には生活環境が変わらないと再発しやすいと思っていました。しかし皆さん結構乗り越えて行かれるのです。環境が変わったのか?と尋ねると、「気にならなくなった」「なぜか上司の対応が変わった」などと返ってきます。何かの自己啓発本ではありませんが、「自分が変わることによって周囲が変化する」ということなのでしょうか。
仕事も充実していて、金銭も家庭も何も悩みはないという人の脈はゆったりと落ち着き、しなやかで張りのある打ち方をしていることでしょう。鍼灸治療とはこの脈を作ってあげることです。幸せな人と同じ脈になることで幸せに近づくことができるのです。鍼灸をするということは、健康になるということは、どんな風水グッズを買うよりも神仏に祈るよりも絶対最高の開運法だったのです。
第100回香肌文庫 2014.6.1