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香肌文庫 第88回 医学の初期化

昨年の山中伸弥教授のノーベル賞受賞で、「細胞の初期化」という言葉をよく耳にされたと思います。
私達の目、皮膚、神経、内臓などは全て元々一つの同じ細胞から分かれたものです。その同じ細胞が分化していく過程で、まるで役割を与えられたかのようにそれぞれが目になったり、皮膚になったり、肝臓になったりと別々の物を形成していくのです。細胞の初期化とは、体から取り出した細胞を役割分担していく前のリセットされた状態に人工的に戻すことを言います。つまり、このリセットされた初期化細胞はあらゆる組織に成れる可能性を秘めているわけです。目にも成れるし肝臓や腸にも成れるわけですから、再生医療による難病治療に大いに期待されています。
先日、生化学専門の先生に少しお話を聞かせて頂けたのですが、初期化した細胞というのは正常な組織化をしていく反面、ガン化する危険を含んでいるそうです。それは効率よく初期化するためにはガンを誘発する性質を持っている因子を導入する必要があるからだそうです。この事が医療へ実用化するにあたっての懸念であり課題となっているようです。また、人工で初期化したものだけでなく、細胞とは分化していく過程で、必ず負の側面を抱えながら成長していくものだとお話してくださいました。

私はこれらの話を聞いた時、生意気にも「なるほどなあ…」と思いました。このコラムの第87回で、「パワーは危険と背中合わせ」ということを書きましたが、健康とか正常という状態は何か邪悪なるものに打ち勝っている状態と思っていたからです。生命を脅かすものが同時に存在していなければ生命力も湧かないのではないでしょうか。度々陰陽論になりますが、陰が無ければ陽は存在しません。勇気は臆病から生まれ、正義も悪があればこそ生まれます。
…とは言っても、再生医療の最先端で研究している先生方は、私みたいに遥かなる東洋医学に酔いしれているわけにもいかず、あらゆる可能性を追求し突き進んでおります。 ただ、お話してくれた先生も、「医学って最終的には哲学なんですよね…。」とおっしゃっていました。
西洋医学の祖とされる古代ギリシャのヒポクラテスは、外科的処置は最終手段で、自然治癒を最も尊重していました。また、土地の性質や季節の変化が体調へ影響することを強調していたりと、意外にも“東洋くさい”んです。東洋の陰と陽、西洋で言うゴッドとサタン、私は遠い未来には「東洋医学も西洋医学も結局同じでした!」という「医学の初期化」する日が絶対来るような気がしています。

第88回香肌文庫 2013.6.1

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