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香肌文庫 第81回 食は運命を左右する

糖尿、メタボ、高コレステロール…現代病とも言えるこれら疾患は、美食・過食が大きな原因であることは
言うまでもありません。
鍼灸治療の現場から見ますと、現代は胃系統のツボを使うことが非常に多くなっています。胃系統の治療と言っても消化器系の治療だけではありません。膝痛、腰痛なども胃系統のツボを使わなければ治らないのです。これも飽食の時代特有の傾向かもしれません。
少食・粗食が健康に良いことは昔から言われていますが、それが健康だけでなく、運勢にも影響することに気付いた人が江戸時代にいました。名前を水野南北と言います。
南北は十歳の頃から飲酒喧嘩に明け暮れ、酒代欲しさに犯罪を犯し入牢されます。出獄後、自分の運勢を易者に見てもらったところ、「剣難の相が出ている、あと一年の寿命だろう」と宣告されてしまいます。
難を逃れるには出家しかないと言われた南北は、禅寺に弟子入りを志願するのですが、住職は断るつもりで
「一年間麦と大豆だけの食事を続けてきたら入門させよう」と南北に言います。
しかし南北は命欲しさに一年間麦と大豆だけで過ごし、再び禅寺を訪れる前にもう一度昨年の易者に顔を出したところ、「剣難の相が消えている!いったいどんな徳を積んだのだ?」と驚かれ、食の改善が人相延いては運命まで変えることを知るのです。
その後南北は観相家を志し、人相を究めるため髪結いを三年、体相を究めるため風呂屋の番頭を三年、さらに
骨相を究めるため火葬場で三年間修行をします。そして今回のタイトルにもさせて頂いた「食は運命を左右する」という今まで誰も言ったことがないことに確信を持ち、「人格は飲食の慎みによって決まる」「粗食の者は貧相でも幸運をつかむ」「難病は粥で治す」「少食の者は死際の苦しみがない」などの結論を出します。
水野南北は江戸時代中期の人ですが、現在の運命学の世界でも観相の大家として知られ、その遺教は我々鍼灸師の診断にも参考にされています。

東洋医学では、生命は天地父母から授かった「先天の気」と生後に飲食で得られる「後天の気」から成り立っていると考えます。先天の気と後天の気は水と土のような関係であり、美食・過食によって後天の気(土)を過剰にすると先天の気(水)を減らします。寿命を詰めるということです。
昨今の成分重視の栄養学のせいで少食・粗食を恐れる人が多いようですが、昔の人力車の車夫は麦飯と沢庵で江戸から日光まで駆けたそうです。決して栄養数値には表れなくとも、食物には「氣」というような力があることをもっと信じてよいのではないかと思います。
そして頭脳で考えたのではなく、凄まじいほどの実見に寄る水野南北の警告には耳を傾けるべきでしょう。

参考文献
『相法極意修身録~食は運命を左右する』
/玉井禮一郎訳
『現代訳 南北相法』/小林三剛・岩崎春雄訳

第81回香肌文庫 2012.11.1

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