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香肌文庫 第78回 外実内虚と内実外虚

鍼灸治療の診断は「虚実を診る」という一言に尽きます。
力の不足している所を虚とし、力が過剰になっている所を実とします。そして虚があれば必ず実が存在し、実があれば必ずどこかが虚となります。誰かが損をすれば誰かが得をするというしごく当たり前の原理です。 この原理を陰陽論と言います。仮に全てが実、全てが虚となった場合は陰陽が成立しません。即ち「死」を意味します。鍼灸治療とは虚の所に力を与え実の所の力を抜き陰陽のバランスを平にするものです。
診察にあたっては問診や脈診などで虚実の箇所を判断するのですが、浅部が実なら深部は虚、深部が実なら浅部は虚になるという法則があります。例えば肩の凝りでも、皮膚表面が凝っている(実)場合、深部は柔らかく(虚)なっています。反対に表面が柔らかい場合は深部に凝りがあります。専門用語で前者を外実内虚、後者を内実外虚と呼んでいます。この深浅で虚実が逆になるのも陰陽論であり自然の原理です。人も強気に見せる人は本来小心であり、静かにしている人ほど頑強だったりします。男女の性質で言えば、概ね男は外実内虚、女は内実外虚と言えるでしょう。

さて、私たちが恒温動物であるのは気温の変化に応じて内外の虚実を変化させるからです。ここで言う虚実は病気の意味ではなく正常な生体変化です。冬は寒いので皮膚の毛穴は閉じて緊張しますが、これは寒気を体の深部に入れないようにしているのです。つまり外実内虚となります。しかし常に暖房の部屋に居たり、厚着をしている人は体が反対の外虚となってしまい、いざ寒気にさらされると体の内部に冷えを引き込んでしまいます。冬暖かくし過ぎている人が風邪を引きやすいのもこのためです。夏は反対に熱がこもらないよう皮膚の毛穴を開き、発散しやすくします。内実外虚です。しかしクーラーの効いている部屋に長時間いますと、体は外実の冬型になります。この状態で急に外の炎天下に出れば皮膚は閉じたままで熱は発散されず、大変危険な状態になります。これが熱中症の原因の一つです。
「素問」と言う漢代に書かれた東洋医学の古典には、「冬は隠し事があるかのように過ごし、夏は愛するものを外に見つけたように過ごしなさい」と面白い表現をしています。冬は少々寒くし、夏は少々暑くなる。 
健康に季節を乗り切る教えです。

第78回香肌文庫 2012.8.1

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