病気が治るには自身が持つ治癒力に頼るしかありません。場合によっては良い治療、薬も必要になってきます。それでは、治癒力があって良い治療や薬さえ揃えば病気は必ず治るのでしょうか？実はもう一つ条件が揃わなければ病気は絶対に治らないのです。そのもう一つの条件は何か？それは「時」です。どんなに生命力があって良い治療に恵まれたとしても、時が来ないと病気は治らないのです。病気の多くはその原因を自分で作ってしまうわけですが、それを発病するのも治すのも時が決めることだからです。

例えば、婚活して良い人と巡り合えたから結婚できたのではなく、結婚の時が到来したから良い人と巡り合えたのです。反対に互いの心がすれ違うから別れたのではなく、別れの時が来たから心にすれ違いが生じてくるのです。もっと分かり易く例えれば、心臓が止まったから死ぬのではなく、寿命が尽きるから心臓が止まるのです。
よくよく考えて見ると、全てを終始してくれるのは時だったのです。怒りや悲しみも自分自身で制御していくのではなく、結局時が解決してくれます。時とは規則正しい宇宙の運行です。その運行は私たちの出来事に必ず終わりを与え、また始まりを与えてくれます。
コロナがなかなか収束しないのを政治や社会のあり方に責任があるとするのは次の話で、その前に「時至らず」だからです。時が来ればウイルスは衰え、同時に良き治療法、良き指導者が現れて必ず収束します。

そしてこの終わりと始まり、私たちの人生を数々のチャプターにしてくれる最も身近なものが二十四節気です。
二十四節気とは一年における天の太陽の通り道を二十四等分したものです。二十四節気を意識して観察していると、私たちの体調から社会情勢までがこの二十四節気を境にして始まりと終わりを繰り返しているのが分かります。宇宙のパワーのことを「氣」と言ったりしますが、その正体は「期」または「季」であり、宇宙の運行によって生じる「時」、つまり変化させる力と言えます。



第187回香肌文庫　2021.9.1