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香肌文庫第124回 東洋的思考の極意  


せっかく鍼灸師になっても途中で嫌になってしまい、路線変更してしまう人がいます。

その多くは頭の良い利口な人たちです。いや、こんな言い方をすると鍼灸師は頭の悪い人

ばかり集まっていると誤解されてしまいますね。言い方を変えます。

私がここで言っている頭の良い利口な人とは、考え方が理数系の人たちです。

理数系の人たちが鍼灸を嫌になってしまう理由は、鍼灸医学の根幹となる東洋的思想に

問題があるようです。まずは下に並べた語句を見てください。

  充満⇔空虚 迷う⇔整える 不動⇔変化 付く⇔離れる

⇔の記号は対義の意味です。この記号は同等を表すときにも使うそうですが、ここでは

対義の意味と思ってください。これが利口な理数系の人の答えとなります。

というよりも現代思考の我々にはこれが当たり前です。

しかし、東洋的思考ではこれが全て間違いなのです。どのようになるかというと、

  充満=空虚 迷う=整える 不動=変化 付く=離れる

このように全てイコールとなります。

まず「充満」と「空虚」ですが、水の入ったペットボトルと飲み干して空っぽになった

ペットボトルはどちらが満たされていますか?同じですね。水の入った方は空気が

空っぽですし、飲み干した方は水は空っぽでも空気が充満しています。

「迷う」と「整える」はどうでしょうか?さっさと答えてください。「いつまでグダグダ

と考えているんですか?」「あっ、頭の中を整理してたのですね、ごめんなさい」

次の「不動」と「変化」ですが、変化とは新しく生まれるということで、同時に古いもの

が停止することです。

最後の「付く」と「離れる」は簡単です。結婚とは親と離れるということですね。

どうですか、私は決して一休さんのようなトンチを言っているわけではありません。

全て中国思想の聖典「易経」に書いてあることです。

インドで生まれた仏教の縁起や無の思想も結局は同じようなことを言っています。


中国思想はすべて陰陽論から成り立っていますが、陰と陽も決して対義する別の

ものではなく、陰=陽 同じ根から出ているものに二つの側面があるだけなのです。

以前小児鍼に訪れた子のお母さんが、「この子は憎まれ口ばかり叩くんです…」

と嘆いていたのですが、私は「情け深く、思いやりがある子なんですね」と返しました。

おそらく口の上手な先生くらいに思われたのでしょうが、意地悪でへそ曲がりな子は、

情の厚い性格の子を厳しくし過ぎたり、殺伐とした環境で育てるとなります。

なぜそうなるかといえば、愛と憎は同じ根から発しているからです。


理数系の人は物事が機械的で理路整然としていないと嫌になるようです。まして鍼灸のよ

うに医学に哲学的な要素が存分に入り込んでいるものにはアレルギーを起こすのかも知れ

ません。しかし近年になって、胎児の生成機序やDNAの構造が易の考えと符号している

ことが取り沙汰されたりもしています。また、文字を打ち込んでいるこのパソコンの構造

も易と同じ二進法で成り立っているのです。

理系=文系 違う側面から見ているだけで同じ真理を勉強しているのかも知れません。

あれっ、ますます嫌いになったかな…?

 
                             2016.6.1